« 3年生の後期試験が始まりました | トップページ | 第49回日本高次脳機能学会学術総会に参加しました »

3年後期「吃音学」の授業より

| 投稿者: いけだ

本学では、3年後期に「吃音学」を開講しています。

吃音とは、本人の意図に反して「音を繰り返す」「音を引き伸ばす」「声がつまって出ない(ブロック)」など、発語の流れの滞り(非流暢性)が一般より高頻度に生じる状態を指します。

夢のような話ですが、今年度からは私が編集に携わった新しい教科書を使用しています。
吃音・流暢性障害

クリア言語聴覚療法7 吃音・流暢性障害
池田泰子 坂田善政 編著
飯村大智 角田航平 酒井奈緒美 塩見将志 谷哲夫 土屋美智子 北條具仁 前新直志 宮本昌子 共著
建帛社 発行年月日 2024年4月1日

とくに自分が執筆した章は、学生に伝えたいことがそのまま形になっているため、授業でも非常に使いやすいと感じています。

先日、子どもの吃音に対する吃音訓練法「RASS理論に基づく環境調整法」を実践し、実際に改善へ至ったご経験をお持ちの保護者の方をゲストスピーカーとしてお招きし、60分間お話いただきました。

環境調整法とは、子ども自身には一切指導や助言を行わず、子どもを取り巻く環境(とくに保護者)を調整することで吃音改善を目指す方法です。

当日は、「子どもに対する接し方を変える難しさ」「子どもの変化の過程」「改善に至るまでの葛藤」「言語聴覚士への期待と役割」など、貴重なお話を率直に共有してくださいました。
最後には、これから言語聴覚士を目指す学生へ、温かい励ましのメッセージもいただきました。

学生たちの感想には、言語聴覚士として大切にしたい視点が数多く綴られていました。
その一部を抜粋して紹介します。
・・・・・
◆言語聴覚士として、ご家族に提案する際、専門家の目線から見てしまい、保護者の立場を考えないまま提案してしまうかもしれない。環境調整の主体は親であるため、親の立場に立った提案や助言を行う大切さを今一度理解することができた。これは、小児に限らず成人の患者の家族指導にも通ずる。専門家としての意見を家族指導にどう活かすか、常に相手の立場に立って物事を考えなければいけないということを忘れないようにしようと思った。

◆言語聴覚士としてできることは、お話の内容にもあったように「寄り添う」こ とであると感じた。寄り添うとは、解決策を伝えるのではなく、受け止めて、気持ちの共感をすること であると学んだ。環境調整を理解するには時間がかかり、辛いことであると分かった。保護者の方の気 持ちや不安を直接聞くことが出来るのが言語聴覚士であると思う。したがって、保護者の方の気持ちを今回の お話で聞くことが出来たからこそ、気持ちを否定することなく、共感し、信頼されるような「寄り添い」を行うことが出来るような言語聴覚士になりたいと思った。

◆自分が患者側だったらどんな対応をして 欲しいかを考えて患者や家族と関わることが重要だと分かった。お話の中でもあったが、まずは解決策 やアドバイスよりも、一度その気持ちを受け止めることが大事だと学んだ。吃音を治すうえで解決策など考えて、教えていくことはもちろん重要だが、まずは患者や家族が抱えてきた葛藤や苦しさを受け止めることが大切だと分かった。信頼関係を築くためにも、大切な事であると気付くことができた。

 ◆今回実際に保護者の方のお話を通して、吃音児に対する環境調整法の難しさと、言語聴覚士として吃音児と保護者の方へ親身に向き合う姿勢が吃音の改善に繋がるということを学ぶことが出来た。環境調整法は保護者の協力が無いと行うことが出来ないため、ご家族の理解が必ず必要となる。患者さんだけでなく、ご家族全体を支援していくという考えが重要であると感じた。吃音児とそのご家族に対して、ただ訓練方法を提示して終わりにする言語聴覚士ではなく、どなたからも信頼・安心感があり、吃音児と保護者の方に寄り添うことの出来る言語聴覚士を目指したい。

 ◆言語聴覚士として検査内に組み込まれている質問紙の役割や重要性は理解しているつもりだが、質問紙をする本人は自分自身で結果を目の当たりにすることは自分を否定されているように感じ、どん底にいる状態から訓練が始まっていくことが多いと思う。その状態から持ち直す、安心させられるように関係性を築き上げられるような言語聴覚士になりたいと感じた。

 ◆保護者が不安を感じることは当然だが、環境調整法を成功させるためには、言語聴覚士と保護者との信頼関係は不可欠であると感じた。その信頼を築くために、言語聴覚士には丁寧に説明する力、寄り添う力が求められることを強く実感した。

 ◆相談に来た保護者の方は、行き場のない不安やたくさんの疑問、自分を責める気持ちがあるということを思い出し、今回のお話にあった「寄り添う」ことを言動で示したいと思った。そして、「この人に相談して良かった、ここに来て良かった」と安心してもらえるような言語聴覚士を目指していきたい。吃音領域に限らず、今回のお話を、今後の実習や臨床で活かしたいと思う。
・・・・・

今回のゲストスピーカーのお話は、吃音臨床にとどまらず、言語聴覚士として必要な姿勢そのものを学生に気づかせてくださいました。

保護者としての葛藤や、環境調整法に挑戦した日々、そして子どもの変化を温かく語ってくださったことは、学生たちにとって大きな学びとなりました。

この場を借りて、心より感謝申し上げます。

 

« 3年生の後期試験が始まりました | トップページ | 第49回日本高次脳機能学会学術総会に参加しました »