失語症になったら最初に読む本
| 固定リンク 投稿者: うらの
私は大学教員として失語症を教えていますが、非常に難解なためか尻込みしてしまう学生もたまにいたりします。また、実習にこれから行く or もう行ってきた上級学年の学生にとっても「自由会話が難しい」「どうやってサポートしていったらいいんだろう」「実習でお会いしたあの患者さんはどういう経過をたどるんだろう」など、分からないことが尽きないようです。私は臨床経験が非常に長く、今も臨床を続けていますので、なるべく臨床に即した演習を多く取り入れたり、具体的な説明をするよう心掛けています。ただ、国家試験を目指す学生には専門用語とその意味をどうしても正しく理解してもらわなければならないのもまた事実です。専門用語は大事だし、覚えてもらわないと困るけれど、それが失語症に対する苦手意識に繋がるのはちょっとなあ。そんなことをいつも悶々と考えてきたのですが、先月、こんな本が出版されました。
著書はどちらも私が日頃お世話になっている方たちで、1人は言語聴覚士の先生、もう1人は私が長年にわたり研究のご指導をいただいている精神科の先生です。失語症の症状に始まり、治療計画、リハビリテーションの実際、家族や周りの人ができること、社会とのかかわり、福祉サービスや支援の活用、職場復帰に関することまで、失語症のある「人」への支援のあり方が非常に分かりやすく綴られています。長年の臨床経験に裏付けられた説明と、そして失語症のある「人」を見る温かい視線がダイレクトに伝わってくる1冊です。この本のさらにすごいところは、専門用語の羅列ではなく、失語症を知らない人にも伝わるよう、一貫して平易な表現でまとめられている点です。
是非、本専攻の学生たちにも読んでほしい1冊です。勿論、これから大学で言語聴覚学を学ぼうかな、という人にとっても、背中を押してくれること間違いなしです。