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学会参加記②

| 投稿者: いけだ

日本言語聴覚士協会主催「第23回日本言語聴覚学会inにいがた」の第2報です。

今回、私にとってやりたいと思っていたことが一歩前進した感慨深い学会となりました。32

吃音臨床を始めませんかとお誘いした2名のSTの先生が訓練成果を発表してくれたからです。
1人の先生は中学生、もう1人の先生は青年期の方を対象とした一事例の発表でした。
(1人の先生は口頭発表でしたので、発表の場面の写真は撮れませんでした)

お声をお掛けしたのは、直接法(話し方の工夫を促す方法)を実践していて良くならないと悩んでいた先生、そして、吃音訓練のニーズが高いことは理解していて対応したいと思っているけれど、吃音臨床は様々な理論があり混沌としている状況であるため、迷いがあってスタートを切れずにいた先生でした。

お勧めした吃音訓練は、都筑澄夫先生が開発したRASS理論(自然で無意識な発話への遡及的アプローチ)です。

RASS理論は、話し方の工夫や回避を止めて吃音症状が出る前の自然で無意識な話し方に戻ることを目指しており、話し方の工夫を促す直接法とは真逆の考え方で間接法と呼ばれています。

RASS理論には「RASS理論環境調整」と「年表方式のメンタルリハーサル法」という訓練法があり、子どもから大人の方を対象としています。実際に訓練を実施すると、吃音の改善とともに吃音のある子どもや成人の方の表情が明るく、柔らかくなり、その人らしさが戻ってきます。そのような様子を間近で見る事ができるので私自身も幸せな気分になる療法です。

詳しいことを知りたい方は都筑澄夫先生が勤務されている「都筑吃音相談室」のホームページに訓練法の説明が掲載されていますのでそちらをご覧ください。

2名の先生はRASS理論をご存知なかったのですが、療法の考え方や自分の体験等を説明したところ、すぐにRASS吃音研究会が主催する研修会に参加してくれました。

その後臨床をスタートさせ、成果が得られ、今回の発表に至りました。

以前は、都筑先生が訓練するから治るという見方もありました。都筑マジックということばも聞いた事があります。

そのような状況を踏まえ、都筑先生はお忙しい中、理論や訓練の手続き等を掲載した書籍「間接法による吃音訓練」の出版、年1回の研修会の開催等、都筑先生以外のSTが本療法を実践できるように準備を整えてくださいました。

今回、都筑先生に直接指導を受けていないSTが吃音改善の成果を出すことができたということは、都筑マジックではなくRASS理論の理論がしっかりしているということです。

今回発表してくださった先生方はRASS理論に基づく吃音訓練に対して手応えを感じ、もっと多くのSTに実践してもらいたいと発表することを決意してくれました。そして、職場のSTに研修会の参加を勧めてくれました。このように少しずつではありますが、本療法が広まっていることをとても嬉しく思っています。

ポスター発表は2日目の一番最後の枠でしたので、あまり聞きに来てもらえないかもしれないと思っていましたが、ありがたいことに、発表に興味を持って聞きに来てくれたSTの先生方が。

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来てくださった先生方にご挨拶したところ、お一人は、3月に学苑社さんから「富田分類から学ぶ障害の重い子どもへのコミュニケーション支援」を出版された富田朝太郎先生でした。障害の重いお子さんへのコミュニケーション支援が分かり易く載っています。 

養成校の教員としては、学生さんが現場に出た時にやってみたいと思う療法を選択できるよう直接法、間接法問わず、吃音に関する知識や技術を偏りなく伝えます。そして、STとしては、改善・完治を目指すことができるRASS理論による吃音訓練が吃音で苦しんでいる子どもや成人の方に届くことを目指す活動を継続していきたいと考えています。

 

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