誰もが参加できる工夫
| 固定リンク 投稿者: うちやま
私が以前勤務していた病院では、失語症の患者さんを中心に、集団での言語療法+家族会の場を設けていました(コロナ禍で休止中…)
失語症の患者さんは、退院後にも病院へ通院しながらSTと1対1での言語療法を続けていることが多いです。ただ、患者さんの症状が改善したり、病気になってから一定の期間が過ぎたりすると、多くの場合、病院で行う個別でのリハビリテーションは「卒業」になります。
そのような1対1での言語療法を終了された患者さんが、参加できる機会が集団での言語療法でした。
病院で行っていた言葉の訓練を思い出して取り組んでみたり、患者さん同士が交流したりする場として、STでは月1回の頻度で行っていました。
参加者には、病気になってから20数年経っている患者さんもいれば、まだ数年の患者さんもおられます。男性も女性も、そして50代~90代の方まで、参加されていました。
参加者の方々は、身体の麻痺の程度や失語症による言語障害の程度も様々でした。
一見すると言葉の障害があるのかが分からないくらい軽度の方もいれば、なんとか簡単な言葉や自分の名前が言えるという方、文字が書いてあれば分かるという方、スムーズに話せるけれど言い間違いがあるという方など、言葉を理解したり話したりする力や得意なこと苦手なことが、皆さんそれぞれに違っていました。
多いときには20名ほどの参加者が集まられました。みんなでゲームや歌唱など、さまざまなことを言葉を使ってコミュニケーションを楽しみながら行うわけですが、言語能力の異なる多くの参加者に対する1時間の集団での言語療法!ここは、STの腕の見せ所です。
例えば、クイズ。STは問題の出し方や回答方法を工夫し誰もが参加できるように考えます。
言語障害が軽度の方に問題を出題してもらったり、重度の方にはヒントや選択肢を多く出して選んでもらったり、言語機能のレベルに合わせてクイズを行います。STが少し活動の支援することで、患者さん同士が関わりあい、その場を楽しむことができるのですよ~。
集団での活動は、STとの1対1での言語療法の場面ではみられない良い反応が引き出せます。参加者同士が協力して問題を解いたり、言葉を使いながら取り組む活動として、皆で暑中見舞いや年賀状を作ったり、掛け声を合わせて運動したり、皆で歌詞を考えて歌ったり…こういうことは個別の訓練ではなかなかできません。皆でたのしめるよう季節感や時事ネタを取り入れた様々な活動を企画をしました。
このような集団での言語療法を通して、日々の生活の中で年単位で少しずつ時間をかけて、症状が改善していく面があることを実感しました