KAMATAKAMATAKAMATA!
| 固定リンク 投稿者: わたなべ
先日、電車の行き先表示「KAMATA」を見て、ハッ!としました。
その謎解きは、この後で。
言語聴覚士は、神経・筋の問題で発音(構音)に問題がある方の評価を行う際に、「パタカ」ということばを患者さんに言ってもらうことがあります。スペインの通貨単位「ペソ」のポルトガル語(Pataca)のことではありませんよ。意味のない「パタカ」という発音です。
専門用語で、oral diadochokinesis(オーラル・ディアドコキネシス:音節の交互反復運動)と言います。一定の時間(10秒)測定し、「パ」「タ」「カ」をそれぞれ何回言えたかを評価します。単音節だけではなく「パタカ」という複音節を評価することもあります。
なぜ「パタカ」を用いるのでしょうか。ちゃんと、意味があります。「パ」は口唇、「タ」は舌、「カ」は喉(軟口蓋)の運動機能が反映されているからです。どの音が上手に言えないかがわかると、運動障害が生じている部位もわかります。
さて、閑話休題。
蒲田(かまた)の「KAMATA」は、「パタカ(PATAKA)」に似ていると思いませんか?そうなんです!
KA ⇒ KA
MA ⇒ PA
TA ⇒ TA
このように、マとパの子音だけが異なるのです。でも、発音の部位としては、MもPも同じ「口唇」を使っています(両唇音)。
Mは「鼻音」、Pは「破裂音」で、それぞれ発音方法が異なります。
このことから、「パタカ」の代わりに「カマタ」と発音して測定することも面白いな~と感じたわけです。10秒間に何回「KAMATA」と言えるか?「KAMATAKAMATAKAMATAKAMATA…」
電車の目的地表示が「蒲田」だったら、すぐに気づかなかったかもしれません。「KAMATA」と表示されていたために、職業柄、どの部位を使った音か瞬時に頭に浮かび、似ている音「PATAKA」を連想できたわけです。
現在、1年生は「音声学Ⅰ」で、発音をどのように記述するか、また、どのようにして発音しているかの基礎を学んでいます。日本語の五十音で、「はひふへほ」については、ローマ字でも「ha hi hu he ho」と書き「同じ音素」のように思えますが、実は違いがあります。「はへほ」は同じグループで、「ひ」そして「ふ」はそれぞれ異なる音として取り扱っています。とても不思議ですよね!大変興味深い学びです。音声学や言語学、心理学など、ヒトに関する学びができるのも、言語聴覚学専攻の魅力ですね。