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障害の重さと悩みの深さ

| 投稿者: わたなべ

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唐突ですが、皆さん、悩んでいることはありますか?

言語聴覚士が支援をする対象者は、様々な障害を抱えています。

そのため、障害は、その方の悩みに直結することが多いです。

障害そのものが悩みの種になることもありますが、実は障害から派生した二次的な問題が、悩みの大きな原因であることも少なくありません。

そのため、対象者の症状や障害の程度、重さだけではなく、その方の困り感をしっかりと聴取していくことも大切です。

 

私が言語聴覚士になったばかりの駆け出しの頃、大きな失敗をしました。

脳卒中後の患者さんに対して、失語症の評価をしました。脳卒中の程度が軽く若い方だったこともあり、失語の症状はごく軽度でした。そこで、ついご本人を思いやる気持ちも手伝って「失語症の症状が、ほとんど見当たらないほど軽くて、良かったですね」と話してしまったのでした。その方は、苦々しい顔をして「先生はほかの患者さんと比べて軽くて良かったと思うだろうけど、私にとっては、軽くても、とても困っていることなんだよ」と反論されました。頭をハンマーで叩かれたくらい、私にとって衝撃的なことでした。今思うと、どうしてこんな浅はかなことを言ってしまったのだろう?と反省してもしきれないくらい後悔しています。

最近は吃音のある方と面談する機会が多いのですが、吃音の悩みもまったく同じです。「症状が重いほど悩みが深く、症状が軽いほど悩みが少ない」…そんなことは、決してありません。むしろ、症状が軽い方の方こそ悩みが深い印象を受けます。端的に言うと、「完璧な状態を目指したい」と思えば思うほど、人間はその固定観念に縛られて、自分らしさを失いがちです。もちろん、原因の元となる症状を改善することも可能であれば行いますが、ときには固定した症状と一生付き合って生きていく場合もあるわけです。「障害受容」とも言いますが、そんなに単純に割り切れるものではありません。しかし、今ある状態を変えられないとしたら、どのようにして、その問題と心理的に向き合うか。これは大きな課題でもあります。

言語聴覚士の仕事は、知識や技術を身に着ければ良いだけではありませんね。対象者を全人的にとらえ、その悩みや困り感を洞察して寄り添う力も必要となります。大変なことですが、とてもやりがいのある仕事だと実感しています。

 

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